『ざ』:ざくろ
子供の頃、近所の家になっていてそれを頂いて食べたのが原体験な気がする。
ともすればグロテスクに見えそうなその果実はわたしには宝石にすら見えた。
ぎゅっと詰まった透き通った深い紅の粒。食べればほんの少しの渋みを感じたが、それ以上にきゅんと甘酸っぱい。
小さなその粒を指でつまんで夢中で食べた。
あんなにも美しい果物がこの世にあるだろうか。
柘榴石という鉱石すらあるが、植物のざくろですら食せる石のようである。なんとも罪深い。
自分はどうも、こういうなにか罪悪感や食べること自体に禁忌を感じる果物が好きなようで
ざくろや無花果、木苺、さくらんぼなどなど。
これらにとくに深い意味も意図もないのだけど、ほかの明朗な食べ物と違い
なぜかどこか仄暗い、退廃を感じる。
あまり食べる機会がすくないものばかりではあるけれど
時にはこういうふうに思いを馳せてみるのも面白いかもしれない。
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